東証第一部と第二部の違い② ~上場審査基準について~

「東証第一部と第二部の違い①」では、そもそも株式上場とは何か、どのようなメリットがあるのか、そして、「東証第一部と第二部の違い」を簡単に説明しました。

今回は、東証第一部や第二部の上場審査基準の具体的な中身について紹介していきます。

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上場審査基準とは

株式の上場とは、取引所を介し、不特定多数の投資家の投資対象、および株式売買の対象となることを意味します。

そのため、投資家保護の観点から上場会社としての一定の適格性を有しているかどうかについて、東京証券取引所による上場審査が行われます

取引所では、上場に関する諸規則を定めており、それらに基づいて上場審査が行われます。

つまり、上場審査基準とは、上場に関する諸規則に定められた各種要件となります。

基準は、第一部と第二部で共通するものもありますが、第一部のほうが厳しいものとなっています。

そこで、まず初めに第二部の基準から確認していきたいと思います。

東証第二部の上場審査基準

東証第二部に上場するには、少なくとも以下の形式要件を満たす必要があります。

項目 有価証券上場規程
(市場第二部形式要件)
(1)株主数
(上場時見込み)
800人以上
(2)流通株式
(上場時見込み)
  1. 流通株式数 4,000単位以上
  2. 流通株式時価総額 10億円以上
  3. 流通株式数(比率)上場株券等の30%以上
(3)時価総額
(上場時見込み)
20億円以上
(4)事業継続年数 新規上場申請日の直前事業年度の末日から起算して、3か年以前から取締役会を設置して、継続的に事業活動をしていること
(5)純資産の額
(上場時見込み)
連結純資産の額が10億円以上
(かつ、単体純資産の額が負でないこと)
(6)利益の額又は時価総額
(利益の額については、連結経常利益金額に少数株主損益を加減)
次のa又はbに適合すること

  1. 最近2年間の利益の額の総額が5億円以上であること
  2. 時価総額が500億円以上

(最近1 年間における売上高が100 億円未満である場合を除く)

(7)虚偽記載又は不適正意見等
  1. 最近2年間の有価証券報告書等に「虚偽記載」なし
  2. 最近2年間(最近1年間を除く)の財務諸表等の監査意見が「無限定適正」又は「除外事項を付した限定付適正」
  3. 最近1年間の財務諸表等の監査意見が原則として「無限定適正」
  4. 申請会社に係る株券等が国内の他の金融商品取引所に上場されている場合にはあっては、次の(a)及び(b)に該当するものでないこと
  • (a)最近1年間の内部統制報告書に「評価結果を表明できない」旨の記載
  • (b)最近1年間の内部統制監査報告書に「意見の表明をしない」旨の記載
(8)株式事務代行機関の設置 東京証券取引所(以下「東証」という)の承認する株式事務代行機関に委託しているか、又は当該株式事務代行機関から株式事務を受託する旨の内諾を得ていること
(9)単元株式数及び株券の種類 単元株式数が、100株となる見込みのあること

新規上場申請に係る株券等が、次のaからcのいずれかであること

  1. 議決権付株式を1種類のみ発行している会社における当該議決権付株式
  2. 複数の種類の議決権付株式を発行している会社において、経済的利益を受ける権利の価額等が他のいずれかの種類の議決権付株式よりも高い種類の議決権付株式
  3. 無議決権株式
(10)株式の譲渡制限 新規上場申請に係る株式の譲渡につき制限を行っていないこと又は上場の時までに制限を行わないこととなる見込みのあること
(11)指定振替機関における取扱い 指定振替機関の振替業における取扱いの対象であること又は取扱いの対象となる見込みのあること
(12)合併等の実施の見込み 次のa及びbに該当するものでないこと

  1. 合併、会社分割、子会社化若しくは非子会社化若しくは事業の譲受け若しくは譲渡を行った場合又は2年以内に行う予定のある場合で、新規上場申請者が当該行為により実質的な存続会社でなくなる場合
  2. 新規上場申請者が解散会社となる合併、他の会社の完全子会社となる株式交換又は株式移転を2年以内に行う予定のある場合

(出典)日本取引所グループ 上場審査基準

また、実質審査基準として、東証において以下の観点で審査が行われます。

  • 継続的に事業を営み、安定的な収益基盤を有しているか(継続性および収益性)
  • 事業を公正かつ忠実に遂行しているか(経営の健全性)
  • コーポレートガバナンスおよび内部管理体制が適切に整備され、機能しているか(内部管理体制の有効性)
  • 企業内容等の開示を適正に行うことができるか(開示の適正性)

また、その他として、公益や投資家保護の観点から東証が必要と認める事項も確認できることとなっています。

東証第一部の上場審査基準

東証第一部の上場審査基準も概ね、第二部と同じ項目となりますが、以下の形式要件について厳しくなっています。

(1)株主数(上場時見込み)

2,200人以上(第二部では800人以上)

(2)流通株式(上場時見込み)

  • 流通株式数 2万単位以上 (第二部では4,000単位以上)
  • 流通株式数(比率) 上場株券等の35%以上 (第二部では30%以上)

(3)時価総額(上場時見込み)

250億円以上(第二部では20億円以上)

上記のとおり、第一部に初めから上場するためには、第二部と比べ企業価値(時価総額)が250億円以上といったように、第二部の時価要件(20億円以上)と10倍も違っています

なお、これは、あくまでも東証第一部に初めから上場する基準となります。

東証第二部から第一部となる要件

東証第二部に上場したうえ、下記要件を満たせば、第一部への変更を申請することもできます。

項目 有価証券上場規程(一部指定の形式要件)
(1)株主数(指定時見込み) 2,200人以上
(2)流通株式等(指定時見込み)
  1. 流通株式数 2万単位以上
  2. 流通株式時価総額 20億円以上
  3. 流通株式数(比率) 上場株券等の35%以上
(3)売買高 申請日の属する月の前の月以前3ヶ月間及びその前の3ヶ月間の月平均売買高が200単位以上
(4)時価総額(指定時見込み) 40億円以上
(5)純資産の額(指定時見込み) 連結純資産の額が10億円以上
(かつ単体純資産の額が負でないこと)
(6)利益の額又は時価総額
(利益の額については、連結経常利益金額に少数株主損益を加減)
次のa又はbのいずれかに適合すること

  1. 最近2年間の経常利益の合計5億円以上
  2. 時価総額が500億円以上 (最近1 年間における売上高が100 億円未満である場合を除く)
(7)虚偽記載又は不適正意見等
  1. 最近5年間の有価証券報告書等に「虚偽記載」なし
  2. 最近5年間「無限定適正」又は「除外事項を付した限定付適正」
  3. 次の(a)及び(b)に該当するものでないこと(a)最近1年間の内部統制報告書に「評価結果を表明できない」旨の記載(b)最近1年間の内部統制監査報告書に「意見の表明をしない」旨の記載
単元株式数(指定時見込み) 100株

(出典)日本取引所グループ 上場審査基準

上記のとおり、第二部から第一部への指定替えについては、時価総額が40億円以上となっており、初めから上場する場合と比較すると要件が緩和されています

なお、実質審査基準については、再度審査が行われます。

東証第一部から第二部への降格について

東証では、第一部から第二部への指定替え基準(いわゆる降格基準)も定めており、以下に当てはまる第一部の企業は、第二部へ降格することとなります。

  1. 株主数 2,000人未満(猶予期間1年)
  2. 流通株式数 1万単位未満(猶予期間1年)
  3. 流通株式時価総額 10億円未満(猶予期間1年)
  4. 時価総額 20億円未満である場合において、9ヵ月以内に20億円以上とならないとき
  5. 債務超過の状態となったとき
  6. 最近1年間の月平均株式売買高が40単位未満

直近では、東芝が、5の債務超過の状態となったことで上記に該当し、第二部への降格となりました。

まとめ

◆株式上場の仕組み・メリット

株式の上場とは、取引所を介し、不特定多数の投資家の投資対象、および株式売買の対象となること。

株式上場により、企業は資金調達の円滑化、信用力向上といったメリットを享受できる

◆東証第一部と第二部の違い

第一部と第二部の違いは、上場審査基準の違いで、株主数や流通株式数、時価総額等の要件が定められていますが、第一部の要件は、第二部の要件よりも厳しく設定されている

そのため、東証第一部のほうが、メリットである資金調達の円滑化、信用力向上といった効果も通常高くなる

◆上場審査基準の具体内容について

形式要件として、株主数、時価総額、事業継続年数、利益の額等を一定以上満たす必要がある。

また、実質審査基準として、①事業の継続性および収益性、②経営の健全性、③企業の内部管理体制の有効性、④企業情報開示の適正性といった項目が取引所に審査される。

基準には、第二部から第一部への指定替え基準もあれば、第一部から第二部への降格基準もある。

いかがでしたか、起業を志す人であれば、目指す人も多い「東証第一部上場」!

要件は上述の通りなので、目指す人は、上場までのプロセスを意識して経営に取り組んでいただければと思います。

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