東証第一部と第二部の違い① ~株式の上場のメリット等について~

東芝が債務超過により、東証第一部から第二部に指定替えが決まりました。

それを受けて、そもそも株式上場とは何か、また、意外と知らない人が多い「第一部と第二部の違い」を、証券取引所の上場基準を基に解説していきます。

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株式上場とは

株式の上場とは、取引所を介し、一般個人の方も含めて不特定多数の投資家の投資対象、および株式売買の対象となることを意味しています。

株式上場のメリット

株式上場のメリットは、主に以下の3点があると一般的に考えられています。

(1)資金調達の円滑化・多様化

上場株式は、取引所市場における高い流動性を背景に、あらゆる投資家の投資対象となります。

そのため、上場会社は、発行市場において公募による時価発行増資、新株予約権・新株予約権付社債の発行等、直接金融の道が開かれ、資金調達能力が増大することにより財務体質の改善・充実を図ることができます。

(2)企業の社会的信用力と知名度の向上

上場会社になることによって社会的に認知され、また将来性のある企業というステータスが得られ、取引先・金融機関等の信用力が高くなります

皆さんも、「東証第一部上場会社」と聞くと、その会社のことをあまり知らなくても、安心したりしませんか?

また、株式市況欄をはじめとする新聞 報道等の機会が増えることにより、会社の知名度が向上します。またそのことにより、優秀な人材を獲得しやすくなることが期待できます。

(3)社内管理体制の充実と従業員の士気の向上

企業情報の開示を行うこととなり、投資者をはじめとした第三者のチェックを受けることになり、個人的な経営体制から脱却し、組織的な企業体制が構築され、内部管理体制の充実をもたらします

また、組織的な企業体制の構築や企業の知名度アップに伴い、役員・従業員のモチベーションが向上することにもつながります。

株式上場のデメリット

上場会社になると、上述のようなメリットがあると一般的に言われていますが、一方、上場会 社の発行する有価証券は、不特定多数の投資者の投資対象となります。

そのため、投資家保護の観点から、決算、企業内容の適時開示等、新たな社会的責任や義務が生じることにもなります。

(1)上場継続のための費用・情報開示義務

年間上場料、監査法人への報酬、株主名簿管理料等の費用が必要となり、また、内部管理体制強化・株主総会運営コストも発生します。

また、自社の業績や経営に関わる情報を、有価証券報告書や事業報告書等により、投資家や株主に適時開示しなければなりません。そのため、開示等業務が必要となります。

(2)幅広い株主の出現・買収リスクの増大

会社の経営に対し、個人投資家も含めた多様な株主から広く意見を聞き、それに応えていく必要があります。

そのため、短期的な利益を求める株主もいるため、長期的な企業価値の向上でなく、直近の業績や配当への圧力が増す可能性があります

また、株式が市場で自由に売買されるため、会社にとって不利な株主に買われることもあり、敵対的買収につながる可能性もあります。

株式上場するためには

では、株式上場するためにはどうしたらよいのでしょうか?

株式の上場は、株式を上場したい会社の申請に基づき行われます。

ただし、株式が上場されると不特定多数の投資家の投資対象となるため、投資家保護の観点から上場会社としての一定の適格性を有しているかどうかについて、東京証券取引所による上場審査が行われます

取引所では、上場に関する諸規則を定めており、それらに基づいて上場審査が行われます。

諸規則によって定められた上場審査基準には、株主数や利益の額といった定量的な基準である「形式要件」と、情報開示体制・内部管理体制の状況等を確認する定性的な基準である「実質審査基準」があり、それらをクリアすることで上場することができます。

東証第一部と東証第二部の違い

では、いよいよ本題となりますが、「東証第一部と第二部の違い」は上述の「上場審査基準」の差です。

上場基準では、株主数や流通株式数、時価総額、純資産、利益、設立年数等の要件が定められていますが、第一部の基準は、第二部の基準よりも厳しく設定されています。

そのため、東証第一部のほうが、株式上場のメリットである資金調達の円滑化、信用力向上といった効果は高くなります

ただし、新規上場したい企業の多くは、まず東証第二部に上場申請を行い、その後第一部を目指すこととなります。

なぜなら、基準の厳しさが

「新規上場で東証第一部指定を受ける基準 > 東証第二部から東証第一部への変更基準」

となるからです。(もちろん、初めから第一部指定を受ける会社もあります)

また逆に、今回の東芝のように、東証第一部から第二部に指定替え(いわゆる降格)される基準もあります

次回の記事では、東証第一部、第二部の指定を受けるための具体的な基準の中身や、指定替えの基準について、紹介・解説していきたいと思います。

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