腕時計は、何百万もする高級腕時計もあれば、1000円ぐらいの安い物もあります。
腕時計メーカーは、自社の商品をどの層にどのような価格で販売するか決め、その商品のポジショニング(ブランド)を確立する必要があります。
それに加えて、商品のラインナップを上手に揃えて、顧客集約効果を最大化することが重要です。
今回は、スウォッチグループの戦略をもとに、商品のラインナップを充実させる戦略(ピラミッドモデル)について解説します。
スイス時計メーカーの経営難
スイス時計は、機械式の高級時計として有名かつ人気ですが、1980年代、経営難の時期がありました。
経営難の原因は、デジタル腕時計の登場です。
シチズン、カシオ等の日本メーカーが安いコストで腕時計を製造して、百貨店やスーパーといったあらゆる場所で時計を販売しました。
それに対して、スイス時計は、職人がひとつひとつ手作りで、また販売も百貨店に限られていました。
そのため、価格も高く、さらに販売場所も限られていたため、多くの人がデジタル腕時計を購入することとなり、代わりにスイスの腕時計は売れなくなってしまいました。
では、スイスの腕時計メーカーはどうやって復活したのでしょうか?
復活の要因は、高級ラインの商品だけでなく、安いライン、中くらいの価格のラインといったピラミッド状の商品ラインナップを揃える戦略でした。
その戦略について詳しく紹介します。
スイス時計を救った商品ラインナップ戦略
高級腕時計が売れなくなる中、スイスのあるメーカーは「スウォッチ」という新しいコンセプトの腕時計を開発しました。
「スウォッチ」は、プラスチック製で低価格な、若い人をターゲットにし腕時計でした。
スウォッチは、腕時計を便利な道具としてだけでなく、アクセサリやファッションの一部として時計を位置付けたことで、爆発的なヒットとなりました。
また腕時計をアクセサリやファッションとして位置づけたことで、高級腕時計の地位も同時に高めることに成功しました。
さらに、スウォッチグループは、「スウォッチ」のような低価格モデルの他に、「ティソ」等の中級モデル、「オメガ」等の高級モデル、更には「ブランパン」等の最高級モデルというように、4つの階層をもつピラミッド状の商品構成(ラインナップ)をつくりました。
大量の低価格商品をつくることで、コストを下げ、他社の参入障壁を上げると同時に、自社のブランド認知度を上げ、顧客とのつながりも作ります。
顧客は、通常は若いころはお金がないため、ピラミッドの下の商品を購入します。
そして収入が上がるにつれて、利益率が高い、ピラミッドの上の商品を購入してもらえるように顧客へアプローチしていくのです。
【スウォッチグループのピラミッドモデル】
最高級品:ブレゲ、ブランパン
高級品:オメガ、ロンジン
中級品:ティソ、カルバンクライン
低級品:スウォッチ
(参考)自動車メーカーの商品ラインナップ戦略
自動車メーカーも、同様に低級品~最高級品まで揃える販売戦略を採用しています。
トヨタの「いつかはクラウン」は有名です(今は、レクサスブランドもあり、レクサスブランドの中でもラインナップが揃っているので、もう言わない可能性が高いですが・・・)
各自動車メーカーは、セダンについてはラインナップを揃えており、トヨタ(レクサスブランド除く)ならば、
最高級品:センチュリー
高級品 :クラウン
中級品 :マークX
低級品 :カローラ
いかがですか、ある程度の規模の企業であるならば、顧客の囲い込みにピラミッドモデルによる商品ラインナップ戦略は有効な戦略と言えるでしょう。
ぜひ、一度自社の商品のラインナップはどうなっているか分析してみて下さい。