「ジレット(Gillette)」と聞くと、シェービングで使用する安全カミソリを思い浮かべた人も多いと思います。
実は、T字型安全カミソリおよびその販売手法(替え刃モデル)を発明したのは、まさに
「キング・C(キャンプ)・ジレット」
という名前の人物なのです。
この記事では、「キング・C・ジレット」の生涯(どのような人物なのか)、また「替え刃モデル」というビジネスモデルを紹介していきます。
目次
キング・C・ジレットの生涯
「キング・C・ジレット」の生涯を、以下の3つに分けて紹介します。
- 会社設立まで(替え刃モデルを思いつくまで)
- 会社の成功(替え刃モデルによる成功)
- その後
会社設立まで
「キング・C・ジレット」は、アメリカの発明一家の子として生まれました(1855年)。
一家は金物の商売をしていましたが、運の悪いことに、この商売はシカゴの大火事で財産を失いました。
そのため、「キング・C・ジレット」は早い時期から働かざる得ず、行商の仕事をして家族の生計を支えていました。
「キング・C・ジレット」は行商をしながらも、様々な工夫をして4件の特許を取得するような人物でした。
1895年になると、王冠栓(ビール瓶の蓋のやつ)メーカーのセールスマンをしていましたが、王冠栓の発明者ウィリアム・ペインターから
「使ったら捨てられてしまうものを発明しろ。そうすれば客が安定するぞ」
というアドバイスを受けました。
「キング・C・ジレット」はこの言葉を真剣に受け止め、使い捨てられる商品を考え続けました。
そして、ある日のこと、カミソリを研いでいた「キング・C・ジレット」は思いつきます。
「このカミソリの刃を薄くして、使い捨てにできるのでは」
当時のカミソリは刃が厚く(値段が高かったため)、自分で刃を磨いて繰り返し使うものでした。
しかし、実際はここからが大変で、薄い刃のカミソリを生み出すために、6年かかりました。
苦難の末、「キング・C・ジレット」は、ついに「替刃式T字型カミソリ」を手に入れました。
会社の成功
新しいカミソリの発明に成功した「キング・C・ジレット」は、1901年にアメリカン・セーフティ・レザー・カンパニーを設立(1902年にジレット・セーフティ・レザー・カンパニーに社名変更)。同年12月に特許を申請しました。
やっと販売にこぎ着けた替刃式T字型カミソリですが、販売初年度は、カミソリ本体が51個、替刃が168枚しか売れませんでした。
しかし、カミソリ本体を無料配布する等、様々なキャンペーンを打ったことで、次の1904年には9万個の剃刀と12万枚の替刃を売り上げることに成功しました。
さらに1918年には、アメリカ政府から第一次世界大戦の従軍兵士のための注文を大量受注する等の影響もあり、カミソリ本体は100万本、替え刃はその12倍の1億2000万枚に達し、ついに、替え刃で儲けるビジネスモデル(替え刃モデル)を確立することに成功します。
その後
替え刃モデルの成功を受けて、大金持ちとなった「キング・C・ジレット」ですが、その後は大変な人生を送ることになります。
世界恐慌、ジレット社の他の役員との権力闘争、特許闘争に巻き込まれ、資産を失い、1932年に他界してしまいます。
替え刃モデルについて
「替え刃モデル」について、以下の3つに分けて紹介します。
- 従来のビジネスモデルとの違い
- 替え刃モデルと類似の事例
- 替え刃モデルで成功するためには
従来のビジネスモデルとの違い
替え刃モデルは上記のとおり、「収益の仕組み」と「顧客へ提供する価値」の転換をもたらし、従来と異なるビジネスモデルとなりました。
替え刃モデルと類似の事例
替え刃モデルの大きな特徴は、本体を(他の会社が販売しているもの)よりも安く売り、その後の消耗品やサービスで長く稼ぐという点です。
じつはこの特徴は、以下のように多くの商品で採用されています。
- コーヒーマシーン本体を安く設定し、専用のコーヒーカプセルを継続して買ってもらう
- 電動歯ブラシ本体を安く設定し、専用のブラシヘッドの替えを継続して買ってもらう
- プリンター本体を安く設定し、専用のインクを継続して買ってもらう
また、替え刃モデルの発展を機に、逆の形(本体を高く設定する代わりに、その後のサポートを無料とする等)をアピールする商品もあります。
替え刃モデルで成功するためには
このモデルで成功するためには、以下の2点がそろっている必要があります。
- 商品本体の価格を、競合他社の商品と比べた際に、安いと思わせることができるか
- 継続して使用したくなる仕組みがあるか
なぜなら、商品が競合他社のそれよりある程度安くないと、その後もお金がかかるその商品を選ぶことは通常少ないと思われるからです。
また、替え刃モデルで収益をあげるには、本体を安くする分、その後の消耗品をある程度買ってもらう必要があるため、本体だけ買われると赤字となる可能性も十分にあります。
しかしながら、販売する商品等が上記2点に該当すれば、競合他社に先駆けて収益を確保できるビジネスモデルです。
ジレットのように考え続け、2点に該当する商品を生み出してみるのもいいかもしれません。