既存の市場においては、業界毎に複数の企業が存在し、各企業は各々の商品・サービスのシェア拡大を目指して、様々な事業活動を日々実施しています。
今回は、シェア拡大のヒントとして、シェア10%から大逆転したアサヒスパードライの事例を参考に、時代の変化にうまく対応してヒットした商品たちをを紹介します。
昔のアサヒビールのシェアは10%もなかった!?
今では、ビール会社というと、アサヒ、キリン、サントリーといった名前が代表的な会社として挙げられると思いますが、
実は、アサヒビールは、キリンビール等と比べるとシェアの小さい会社でした。
具体的には1980年代には、キリンがシェア60%を超えているのに対して、アサヒはシェアの10%を切るような会社であり、その差は歴然としておりました。
アメリカのビジネススクールのケーススタディでも、ここまでシェアの差が開いてしまった場合には、逆転は不可能というのが、一般的な説でした。
なお、当時のアサヒの事務職の女性は会社支給の制服で仕事をしていましたが、お昼休み等で社外に出る際は、制服から私服へ着替えて出掛けていたようです。
これは、「アサヒという会社に勤めている=恥ずかしい」ということを意味しています。
今のアサヒを思うと、昔のアサヒが上記のような認識を持たれていたことは、到底信じられないような状況といえます。
では、いかにしてアサヒはシェアを伸ばしたのでしょうか?
それには、多くの人が知っているであろう商品「アサヒ・スーパードライ」の発売が主な要因です。
アサヒ・スーパードライによる逆転
当時、シェアの60%を占めていたキリンは、強力な営業力をもち、殺菌のために熱処理をした「ラガー」を主力商品として販売していました。
対して、シェア10%に満たないアサヒは、現状を打破するため、消費者の声はもちろん、技術者の声にも耳を傾けました。
そして、
- 「本当は生ビールが飲みたい」
- 「日本人の食生活には、キレがあって、苦みがある重くない味が好まれる」
- 「生ビールは傷みやすいため、長持ちさせる技術が必要」
といった要望等があることに気付き、それらの要望に沿ったビールの開発を始めます。
そして生まれたのが、
アサヒ・スーパードライです。
あとは、皆さんご存知の通り、一番売れるビールになる等、大ヒットしました。
この大ヒットのおかげで、アサヒは、キリンと肩を並べる大企業へ発展しました。
もちろん、スーパードライのヒットは、ビールの味だけでなく、以下もシェア拡大の要因と言えます。
- 消費者のお酒を買う場所が、従来の酒屋から、コンビニやディスカウントストアへと移行して、流通チャネルが変化していました。
その変化を受けて、販売の主力を「瓶ビール」から「缶ビール」に変えることで、その変化に上手く対応しました。
上記の変化への対応が一番重要であったと考えますが、以下の要素もスーパードライの人気を後押ししたと言えます。
- すぐれた全国キャンペーンや、インパクトのあるテレビCM等のプロモーション活動の成果
- ライバルであるふキリンの不祥事や、ラガーの味変更による消費者からの不満
シェア拡大の要因は?
大きなシェア格差を覆した要因は何でしょうか?
上記のアサヒの事業活動を踏まえると、シェア拡大の要因として重要なのは、
「消費者のニーズ」、「流通の変化」等の
「時代の変化」をしっかり掴み、「変化に対応するための資源」に集中的に投資したこと
ではないでしょうか。
上記のアサヒでも、「消費者が今求めている好み」、「販売チャネルの変化」をしっかり掴み、「キレが苦みがあり重くない生ビール」の開発に資源を集中するとともに、「缶ビール」での販売に注力したことこそが、シェア拡大の要因だったのではないでしょうか。
その他の事例
他のも、トヨタ自動車のハイブリッドカー「プリウス」も、時代の変化に対応したヒット商品を言えるでしょう。
プリウスは、プロジェクトとしては実は80年代から始まっており、将来のガソリンの値上がりや環境規制の強化を踏まえてた、先を見据えた商品への投資でした。
そして、トヨタ自動車の予想通り、環境への意識の高まりを受けて、ハイブリッドカーであるプリウスは爆発的なヒットとなります。
将来を見据えたプロジェクトがようやく花開いた瞬間です。
その他にも、「旅行予約サイトのじゃらん」「アップル社のiphone」等は、時代の変化を上手くとらえ、シェア拡大に貢献した商品(サービス)と言えるでしょう。
(トヨタ自動車はプリウス発売前からシェアNo1ですが、プリウスの販売台数により、さらにシェアを拡大しました)
これらの事例から、
時代の変化(流れ)を読み、長期的な視野で、その流れに対応する商品・サービス(または販売方法等)を生み出すことが、
企業(のシェア拡大)にとって、とても重要なことが分かります。
特に昨今は進化のスピードが速く、リスクを恐れて何もしないことこそが、リスクとなる時代と言えます。
ぜひ新たな試みに挑戦しみて下さい。