サム・ウォルトン ~小売業で世界一のお金持ちになった創業者~

サム・ウォルトン(Sam Walton)氏は、世界最大の小売業者であるウォルマート(Wal-Mart Stores, inc.)の創業者であり、1985年から88年まで世界1位のお金持ちにもなったこともある、偉大な経営者です。

今回は、そんなサム・ウォルトン氏がウォルマートを世界一の小売業へ成長された方法と、彼のビジネス10箇条について紹介します。

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サム・ウォルトンがウォルマートを創業するまで

サム・ウォルトン氏は、1918年にアメリカのオクラホマ州で生まれました。5歳までオクラホマ州で育ち、その後ミズーリ州に引っ越します。

ウォルトン家は特に貧乏だったわけではないものの、当時は大恐慌の時代だったため、サム・ウォルトン自身も、子供の時から牛乳・新聞の配達等をしてお金を稼いでいました。

こうしてお金を稼ぐことは当時の田舎の少年には珍しいことではなかったそうです。
サム・ウォルトン氏は、この頃から働いていたおかげで、早いうちからお金の大切さを知ることができた述べています。

また、このような子供時代があったため、サム・ウォルトン氏は後に世界一のお金持ちとなったあとも、派手な暮らしはせずに、質素なライフスタイルを維持したと言われています。

1940年、経済学の学位を取得し、ミズーリ大学を卒業します。

サム・ウォルトン氏は、大学院への進学を希望していたものの、経済的な理由で断念し、小売大手のJCペニーに就職しました。

JCペニーで営業をしている時、ある上司から「もし君の販売成績が優秀でなければ、君をクビにするところだ。君は小売業に向いていない」と言われたそうです。この上司がその後どうなったか気になります。

1942年、第二次世界大戦のさなか軍隊の召集を受け24歳で入隊することになります。

1945年に兵役を終えると、サム・ウォルトン氏は起業したいと考え、兵役時代に貯めた5千ドルと、妻(1943年に結婚)の父から借金した2万ドルで、バラエティストア・ベン・フランクリン(工芸品等を販売する雑貨店、後に破産)のフランチャイズ店をアーカンソー州にオープンしました。

ウォルトンは27歳にして小売業の店長として、このフランチャイズ店を州一番にすることを目標にかかげ、見事に成功させました。

一方で、このフランチャイズ契約は不利なもので、後に、この契約は失敗であったと振り返っています。

しかし、ビジネスの方法は「誰からでも学べる」という教訓を得られたので、無知であったことがかえって役に立ったと語っています。
そして、サム・ウォルトン氏は試行を重ね、様々なことを試すうちに薄利多売の小売に行き着きました。

ベン・フランクリンのフランチャイズ店を15店舗も経営するまでになったですが、サム・ウォルトン氏ですが、自由にできないというフランチャイズ店のしきたりに不満を抱いていました。

そんな中、日用品・雑貨の販売が小中規模店舗中心であったのに対して、1962年になると、Kマートという大手雑貨チェーンが、ディスカウントストア(薄利多売、大量仕入れを実現できる比較的大型な店舗)という新たな小売スタイルを始めました。

サム・ウォルトン氏(この時、44歳)は、この波に乗ることを決意し、自身のディスカウントストアの出店に乗り出します。
これがウォルマート1号店となります。

ウォルマートのビジネスモデル

その後、ウォルマートは着々と店舗数を増やしていきます。

1988年、サム・ウォルトン氏は70歳でCEOを退任しました。そして、1991年にウォルマートはシアーズを抜き、全米一の小売企業になりました

ウォルマートの店舗数の急激な伸びは以下のグラフとなります。

なお、ウォルマートは、2015年の世界の小売業の売上高ランキングで、2位(116,119百万ドル)を大きく引き離したうえで、1位(482,130百万ドル)となっております。
(参考:Amazonは、10位で79,268百万ドル)

なぜウォルマートはこんなにも成長できたのか

ウォルマートの躍進を支えたのは、多くの店舗を結ぶ独自の流通センターでした。

この流通センターは半径約250~500㎞、複数の店舗をカバーして、店舗のほとんどの商品を発注から48時間以内に受け取れるようにしました。

これにより、ウォルマートは各店舗の在庫が減り、在庫回転率を高めることができ、返品や廃棄が格段に減らすこと(コスト削減)に成功し、よりディスカウントされた商品を顧客に提供することに成功しました。

また、それまではKマート等、大量に商品を仕入れ、また大量の商品を捌くことができる「大中都市立地」が前提だったディスカウントストアを、

大量の商品を物流センターで仕入れ、各店舗に配送することで、「小都市立地」でも可能としました

「大中都市立地」には多くのディスカウントストアが競い、値引き競争で負けると撤退といったことも多かったのに対して、

「小都市立地」では、競合がおらず、また都市によっては人口が伸び、ウォルマートは大きな成長を遂げることができました。

一旦、流通センターを中心に各店舗との物流ネットワークができると、その地域で支配的な地位を占めることができるようになりました。

これが、現在コンビニの出店戦略等でよく耳にする、いわゆるドミナント戦略というものです

まさに、ウォルマートは物流ネットワークを築くドミナント戦略で成功したと言えます。

サム・ウォルトンのビジネス10箇条

サム・ウォルトン氏は、ウォルマートを引退しますが、同社がますます発展するように、自身が大切にしていた10箇条を残しました。経営者・管理職にとって、大変ためになる内容ですので、ぜひ紹介させていただければと思います。

仕事に熱中しよう

Commit to your business.

「commit」は通常「専念する」といった意味があります。「自分のビジネスに傾倒するほど専念すること」が、ビジネスを成功のコツとよく聞きますが、サム・ウォルトン氏の言葉から来ているのかもしれません。

従業員と利益を分かち合い、パートナーとして扱おう

Share your profits with your associates and treat them like your partners.

そうした従業員を単なる部下として扱うのではなく、パートナーとして扱うことで、会社の一員として団結して仕事ができると語っています。

もちろん、それは内面的な取扱いだけではなく、サム・ウォルトン氏は、従業員にストックオプションを与え、従業員が会社の発展により恩恵を受けるようにしていました。

同僚を活気づけよう

Energize your colleagues.

仕事の成果を上げるためには、チーム全体の活力も上がる必要があります。そのため、同僚を活気づけ、意欲を引き出すことが重要となってきます。

可能な限り全てのことをパートナー達と話そう

Communicate everything you possibly can to your partners.

サム・ウォルトン氏は、できるだけ情報を公開し、従業員・パートナーが会社のことをよく知ることで、会社のおかれた状況や課題、解決に向けた取組みへの理解が進み、結果として大きな力を発揮すると考えました。

従業員が事業のためにした全てのことを評価しよう

Appreciate everything your associates do for the business.

サム・ウォルトン氏は、従業員に感謝し、賞賛することは、どんな報酬にも匹敵するほどの効果があると考えていました。

従業員を褒めることは、費用も掛からず、従業員のモチベーションを上げる効果的な手段です。ただし、これを実行するには、日頃から従業員に目を配り、その従業員の本質を見抜く必要があります。

成功を祝おう

Celebrate your success.

上とよく似ていますが、成功したらきちんと祝うことが重要です。これにより次も成功しようと、会社全体がいい循環で回るきっかけとなります。

会社のあらゆることに耳を傾けよう

Listen to everyone in your company.

サム・ウォルトン氏は、顧客の声はもちろん、顧客に接する現場の従業員の声にも耳を傾けました。

誰もが自由に率直な意見を言える環境を整え、それを会社の体質にすることが大切です。

顧客の期待を超える働きをしよう

Exceed your customers’ expectations.

顧客の期待を裏切ること以上に、顧客を失うものはありません。
ウォルマートは「満足を保証」というポリシーのもと、少しでも顧客の期待を上回るように取り組み、その結果、期待以上のものを得た顧客の多くがウォルマートのリピーターとなりました。

競合相手よりも経費を抑えよう

Control your expenses better than your competition.

サム・ウォルトン氏は、これが競争力の源であるとは断言しました。
競合相手よりもコストが少なければ、それだけ商品を安くできるか、利益が増加します。

他社と同じ商品を売る小売業ならではの言葉とも言えるでしょう。

独自の道を切り開こう

Blaze your own path.

ウォルマートは、流通センターのネットワークによる「小都市立地」でのディスカウントストアの出店という、独自の道を切り開きました

こうした誰も手を出さない領域の課題を解決して、新しい道を切り開くことが新規ビジネスにおいては特に重要になると思います。

いかがでしたか、小売業で世界一のお金持ちとなったサム・ウォルトン氏ですが、彼の残したビジネスモデルや10箇条は、現在でも応用のきく内容となっていますので、ぜひ自身のビジネスでも役立ててみて下さい。

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