ビッグデータの利活用と流通(PDS、情報銀行、取引市場とは)

IoT機器の普及や AI の進化等により、多種多様かつ大量のデータを効率的かつ効果的に収集・共有・分析することが可能となっています。

新規サービスの創出等において、そうした(ビッグ)データを上手に活用することは不可欠と言えますが、分野横断的なデータ流通は発展しているとはいい難いのが現状です。

そこで、ビッグデータの円滑な流通を実現するために、「PDS」「情報銀行」「データ取引市場」といったデータ流通・活用の仕組みが検討されています。

そこで、データを巡る最近の動向に加え、現在検討されている「PDS」、「情報銀行」、「データ取引市場」といった仕組みについて紹介します。

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(ビッグ)データを巡る動向

IoT機器の普及や AI の進化等により、多種多様かつ大量のデータを効率的かつ効果的に収集・共有・分析・活用することが可能となっており、データを活用することで新規事業・サービスの創出、生産活動の高度化・効率化、国民生活の安全性及び利便性の向上等が実現すると期待されています。

諸外国においてデータを活用したビジネス・サービスの高度化に向けた取り組みが進展していますが、日本では様々な理由からデータの活用が企業内又はグループ内にとどまる等、データを活用したビジネス展開が十分進んでいるとは言い難い状況といえます。

国内でのデータ活用が困難な状況が続けば、データを活用した事業が可能な環境を求めて我が国企業が海外に出ていかざるを得ない、AI の開発・活用にも支障が生じるといった指摘もなされているところであり、国際的な競争の観点からも、関係者の権利・利益に関する適切なバランスがとれたデータ流通・活用環境を整備することが必要となります。

個人情報を含め多種多様かつ大量のデータを企業や業界を越えて安全・安心に流通・活用できる環境が整備されることで、新規事業・サービスの創出を通じた日本の産業の競争力強化や経済活性化、国民生活の安全性及び利便性の向上等が実現し、急速な少子化・高齢化等の日本が直面している課題の解決につながる可能性もあります。

また、安全・安心にデータを管理・流通・活用できる仕組みが確立されれば、海外からもデータを日本に預けたいというニーズが高まることが期待され、さらに、多種多様かつ大量のデータの活用が可能となることで AI の潜在能力が最大限発揮され、第4次産業革(Society5.0)の実現に貢献することができます。

技術及び社会の動向

有線及び無線のブロードバンドネットワークの整備、スマートフォンや IoT機器 (センサー等)の普及、クラウド利用の進展、AI の進化等により、個人の行動履歴を含めた多種多様かつ大量のデータを効率的かつ効果的に収集・共有・分析・活用 できるインフラ・技術環境が実現しています。

インターネットの普及等により情報の瞬時の拡散が可能となる中、サイバー犯罪・攻撃等のリスクが高まっており、個人に関する情報の管理について国民・消費 者の意識が高まっている。

制度の動向

平成 27 年の「個人情報の保護に関する法律」(以下「個人情報保護法」という)の改正により、匿名加工情報に関する規定が整備されたことで、まちづくり、防災・減災、医療(研究)等、社会全体に寄与する分野において、匿名加工されたデータの活用が進展することが期待されています。

海外の動向

EU では、データポータビリティ権の創設を含めた一般データ保護規則の成立等、個人関連データの保護を強化しつつ、本人の意思を重視したデータ活用を実現しようとする流れがあります。

このほか、機械が生成した非個人関連データを含めて EU 域内でのデータの自由な流通・活用 を促進するための政策について検討が進められています。

また、米国のMyDataイニシアティブ(エネルギー分野の Green Button や医療分野のBlue Button 等)や、英国の midataに関わる取り組みをはじめとして、官民が保有するデータを再利用しやすい形で本人に還元し、本人関与の下でのデータ活 用を拡大するための施策が各国において広がりつつあります

データ流通環境整備の必要性

データは「個人情報を含むデータ」、「匿名加工されたデータ」、「個人に関わらないデータ(IoT 機器からのセンシングデータ等)」の3つに分類することができます。

データ流通の便益を個人及び社会全体に還元するために、これら3つのデー タの流通・活用を全体として活性化することが急務となっており、特に「個人情報を含むデータ(以下「パーソナルデータ」という)」については、個人情報保護法等の影響もあり、企業や業界を越えた流通及び活用が十分進んでいるとは言い難い状況といえます。

一方で、企業がデータ活用をどのように進めるかは競争上の判断として極めて重要であり、データの「囲い込み」をすること自体を問題とすべきではなく、企業や業界を越えた活用が必須であるといった見方は誤りだとの意見もあります。

他方、データの「囲い込み」は、企業の間での消費者の流動性を下げ、競争を阻害するので、データポータビリティを担保することが望ましいとの意見もあり、このほか、自動走行実現に向けたダイナミック・マップ(高精度3次元デジタル 地図)の構築のように、分野によっては、競争上の優位性を確保するため各社がデ ータを囲い込むのではなく、データを公開・流通・活用する協調領域を拡大し、官民が連携して「オープンイノベーション」を推進することで、大きな効果を上げようという取り組みもあります。

企業や業界を超えた分野横断的なデータ流通を阻害する課題を解決し、パーソナルデー タを含めた多種多様かつ大量のデータの円滑な流通を実現するために、個人の関与の下でデータの流通・活用を進める仕組みである「PDS」、「情報銀行」、「データ取引市場」といった取り組みが検討されています。

以下、 「PDS」、「情報銀行」、「データ取引市場」について紹介します。

PDS(Personal Data Store)とは

他者保有データの集約を含め、個人が自らの意思で自らのデータを蓄積・管理するための仕組み(システム)であって、 第三者への提供に係る制御機能(移管を含む)を有するものとなります。

管理方法については2種類あると考えられており、

運用形態としては、 個人が自ら保有する端末等でデータを蓄積・管理するものを分散型(事業者は本人の同意によりデータを活用可能)

事業者が提供するサーバ等でデータを蓄積・ 管理するものを集中型(個人は当該事業者にデータの蓄積・管理を委託する)

といいます。

実際にデータをやり取りする形態と、データをやり取りせずに必要な時にアクセス権(閲覧のみ可、コピー不可など)を提供・管理する形態も検討されています。

情報銀行(情報利用信用銀行)とは

個人とのデータ活用に関する契約等に基づき、PDS等のシステムを活用して個人のデータを管理するとともに、個人の指示又は予め指定した条件に基づき個人に代わり妥当性を判断の上、データを第三者(他の事業者)に提供する事業となります。

データの提供・活用に関する便益は、デー タ受領事業者から直接的又は間接的に本人に還元されるものを予定しています。

データ取引市場とは

データ保有者と当該データの活用を希望する者を仲介 し、売買等による取引を可能とする仕組み(市場)となります。

価格形成・提示、需給マッ チング、取引条件の詳細化、取引対象の標準化、取引の信用保証等の機能を担うことが想定されます。

PDS、情報銀行の意義

PDSの意義は、他者が管理しているものを含め本人に由来(起源)するデータを 自らの意思で本人もしくは指定する者に集約し、第三者(他の事業者)へのデータ の提供について自らが個別に判断・制御(自己情報コントロール)できるということです。

一方で、個人側から見た情報銀行の意義は、自らが示した一定の範囲内で第三者(他の事業者)へデータ提供するよう信頼できる者に委託することで、自ら個別に判断する必要なく、データ活用の便益を享受できるということです。

また、信頼に足る情報銀行が関与することで、データホルダーから個人へデータを戻しやすくなるとともに、個人にとって第三者へのデータ提供の障壁が低くなる等、より多くのデータの流通・活用が進むことが期待されます。

PDS、情報銀行は、まだ検討段階(データ取引市場は一部業者が実施)であり、今後どういう上手く発展していくかやや不透明ですが、上手く発展すれば、きっとビジネスの大きな助けとなるので、今後もこれらの動向はウォッチして、記事にしていきたいと思います。

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